手巻きインダクタを計測のためNanoVNA用LC測定アダプタを自作【KiCad・ガーバーデータ配布あり】

NanoVNAでインダクタ(コイル)やコンデンサを高周波で手軽に測定できる、専用のLC測定アダプタ(治具)を製作しました。

NanoVNA用LC測定アダプタ基板

高周波回路やアンテナ周辺の回路を自作する際、避けて通れないのがインダクタ(コイル)の手巻きです。 しかし、ここで毎回悩まされるのが狙い通りのインダクタンスになっているか?という点でした。

一般的な安価なLCRメーターは、測定周波数が100kHz〜せいぜい数MHz程度に限られます。 しかし、実際に使いたいVHF帯やUHF帯などの高い周波数では、巻き線の浮遊容量や表皮効果によって実効インダクタンスが大きく変化します。

そのため「実際に動作させる周波数でインピーダンスやインダクタンスを測定したい」と考え、NanoVNAのS11(反射測定)を利用してL/Cを測定するための専用アダプタ基板をKiCadで設計・製作しました。

基板の回路や基本構造は、JH4VAJ氏が公開されているNanoVNA L/C測定アダプタ(タイプ3 / シンプル版)のコンセプトを参考にさせていただいています。 今回作成したKiCadプロジェクト一式と発注用ガーバーデータも配布しています。

アダプタ基板の設計(KiCad)

今回設計したのは、NanoVNAのCH0(PORT 1)に直結する非常にシンプルなS11反射測定用のアダプタです。

高周波測定では、測定対象(DUT)までの配線長がそのまま寄生インダクタンス(およそ1mmあたり1nH程度)になってしまいます。そのため、SMAコネクタの芯線から測定ポイントまでのパターン長を極限まで短縮したレイアウトにしました。

測定端子には、ソケットではなく太さの異なる複数のスルーホールを並べて配置しています。

  • 細いスルーホール: リード線タイプの小信号インダクタや抵抗向け
  • 太めのスルーホール: 太いポリウレタン銅線(UEW)で巻いた空芯インダクタ向け

これにより、ソケットによる接触抵抗や浮遊容量を排除しつつ、線の太さに合わせてしっかり差し込める(または直接ハンダ付けできる)ようにしています。

組み立てと仕上げ

SMAコネクタをハンダ付けしたら、オリジナルと同様に基板の裏面にゴムシート(ゴム足)を貼り付けました。

NanoVNAのキャリブレーション

NanoVNAで治具を使う場合、キャリブレーションが重要となります。 治具の端面でOPEN(開放) SHORT(短絡) LOAD(50Ω)を正しく認識させる必要があります。

ここで普通のリード付き抵抗を使うとインダクタンス成分を持ってしまい、高周波領域で50Ωから大きく狂ってしまいます。

そこで今回は、秋月電子で入手できる高周波終端用チップ抵抗 50Ω 5Wを採用しました。

  • 校正治具の作成: チップ抵抗の両端電極にすずメッキ線をハンダ付けし、基板のスルーホールにそのまま差し込めるダミー端子を作成しました。リード長は可能な限り短く詰めています。
  • 校正手順:
    • OPEN: 端子に何も挿さない状態
    • SHORT: 太めのすずメッキ線でスルーホール間を最短短絡
    • LOAD: 自作した50Ωチップ抵抗治具を挿入

NanoVNAを使った測定手順

  • キャリブレーション(CAL)

    • NanoVNAのCH0にアダプタを装着。
    • 測定したい周波数範囲(STIMULUS → START / STOP)を設定。
    • CAL → CALIBRATE を選択:
      • OPEN: スルーホールに何も挿さない
      • SHORT: すずメッキ線で短絡
      • LOAD: 自作した50Ω高周波チップ抵抗治具を挿入
    • DONE → SAVE 0 等に保存。
      ※治具端面で校正することで、コネクタや基板パターンの浮遊成分をキャンセルします。
  • NanoVNAの表示設定(S11 SERIES L)

    • DISPLAY → TRACE: インダクタンスを表示させたいトレースを選択
    • DISPLAY → CHANNEL: CH0 (S11) を選択
    • DISPLAY → FORMAT: MORE → SERIES L を選択
      (※コンデンサを測りたい場合は SERIES C を選択)
  • インダクタの挿入と測定

    • スルーホールに自作インダクタの足を差し込みます。
    • 画面上のマーカーを目的の周波数に合わせると、直列インダクタンス(nHやµH)がダイレクトに数値表示されます。
    • 周波数を上げていくとインダクタンス値が急増し、自己共振周波数(SRF)を境にマイナス(容量性)へ反転する様子がリアルタイムに観測できます。

参考 : NanoVNA L/C測定アダプタ(シンプル版)を使ってコイル作りをしました

設計データ・ガーバーデータの配布

今回作成した基板のKiCadプロジェクトファイルおよび基板製造サービス(JLCPCB等)にそのままアップロードできるガーバーデータ(ZIP)を公開します。

まとめ

NanoVNAとシンプルな治具を組み合わせることで、高周波用インダクタの特性をピンポイントで確認できる環境が格安で整いました。 特にRFチップ抵抗を使った校正治具を用意したことで、高周波でも信頼できる測定ができています。

手巻きコイルのインダクタンス測定に悩んでいる方は、ぜひ基板を発注して試してみてください!

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