アマチュア無線の免許を取り、交信するために傍受してみたところ、その内容があまりにもオペレーターによって異なり困惑しました、 試験では法律で定められている内容が出題されますが、それ以外の交信方法については統一されたガイドラインがあり運用されているという状態ではないようです。 そのため、Webや冊子などを調べてみたのですが、初心者にとって非常にハードルが高い現状が見えてきました。
- 統一された運用プロトコルが存在しない
- 団体・人によって異なるルールを主張している
- さらに地域や周波数・年代によっても「ローカルルール」が存在する
- それらをまとめた資料がWeb上に見当たらない
本来指針を示すべきJARL(日本アマチュア無線連盟)のWebサイトを見ても、初心者向けに交信方法を教える資料はありますが、ガイドラインは見当たりません。
そのため、私が疑問に思った点を、法律を調べたり総務省に問い合わせたりして分かったことをまとめました。
なお、今回はVHF/UHF帯でのFM/D-STARによる音声交信を想定しています。
まずは「法律」を守る
「ローカルルール」や「慣例」以前に、まずは法律です。法律で決まっていること以外は、基本的に自由にやればよいと私は考えています。
- 電波法
- 無線局運用規則
- バンドプラン
しかし、実際に運用しようとすると「無線局運用規則」は非常に読み解くのが難しく、現場で使われている「慣例」についてはほとんど資料化されていないのが現状です。
そもそも電波が飛んでいない・受信できない問題
住宅密集地でコンクリートの建物に囲まれている場合は、携帯電話の感覚でいるとまず受信できません。
見晴らしの良い所(最低限、開けた公園など)に行き、長いアンテナを使うだけでも、だいたいは受信できるようになります。
試験電波を出したいとき
試験電波を出す際の手順も規則で決まっています。
無線局運用規則 第39条 https://laws.e-gov.go.jp/law/325M50080000017#Mp-Ch_2-Se_2-At_39
運用例
「EX EX EX こちら JL1HMT JL1HMT JL1HMT」
(※EXは「ただいま試験中」の意味ですが、「CQ」同様にそのままEXと発声して問題ありません)
(1分間待つ) 他の無線局から停止の要求が無いことを確認。
「こちら JL1HMT 本日は晴天なり 本日は晴天なり 本日は晴天なり」 (※10秒未満でVVVとコールサイン送信)
通信を終了する時はなんと言えば良い?
呼び出し周波数でCQを出して、他の周波数へ移動するために送信を終了する場合、最後になんと言うべきか迷いました。
無線局運用規則 第38条(通信の終了) 通信が終了したときは、「VA」を送信するものとする。ただし、海上移動業務以外の業務においては、これを省略することができる。
結論
アマチュア無線では省略可能です。 実際に、周波数を指定しての待ち受けCQの際などに「VA」(音声の場合は「さようなら」)と言う人は居ないようですし、言う必要も無いとのことでした。
コールサインを言う必要があるタイミング(総務省へ質問)
Web上で調べてみると「コールサインは毎回言え」派 vs 「コールサインは毎回言うな」派 があり、どちらを信じれば良いのか分かりませんでした。 無線局運用規則を見ても判断がつかなかったため、こちらについて総務省に直接問い合わせました。
Q1. 短い交信でも毎回コールサインは必要か?
質問
無線局運用規則第30条の適用がない10分未満の送信であっても、アマチュア無線の交信で送受信の切り替わりごとに識別信号の送信が必要とされるのは、「送受信の切り替わり」を無線局運用規則第23条に規定する応答事項の送信が必要なタイミングと見なし、毎送信の都度、識別信号を送信する義務があるという解釈に基づいているという認識でよろしいでしょうか。
総務省からの回答
アマチュア無線は不特定多数のアマチュア局が同一の周波数帯で送受信を交互に行って交信を行うため、送信の最後に呼出事項と「どうぞ」を送信しないと相手が送信してよいのかわからなくなります。そのため、義務というほど厳格ではありませんが規則第20条と第23条を準用した形になります。
結論
アマチュア無線では、短い交信であっても送受信のたびに識別信号(コールサイン)を送るのが一般的で、これは混信を防ぎ、相手局に交信権を譲るタイミングを明確にするために、規則(第20条・第23条)を準用している運用上の習慣とのことでした。つまり**「義務ではないが、慣例として毎回コールサインは省略しないほうが良い」**ということになります。
実際のところ、コンテスト・レピーター利用時(D-STARでの山掛けやGW経由)などは時間効率を優先し、送受信のたびに識別番号を送らない運用や場合によってはルールとなっているため、交信の状況によって慣習が変わるといったところが分かりにくいポイントだと思います。
Q2. 「10分ごと」の規則(第30条)について
Web上では「10分ごとにコールサインを言わなければならない」という記述も見かけます。これについても聞きました。
質問
無線局運用規則 第30条に基づき、アマチュア局は10分ごとに「DE」およびコールサインを送信しなければならないとされています。この規定は、上記1でコールサインを省略している交信において、交信開始から10分が経過する都度、識別信号を送出しなければならないという認識でよろしいでしょうか。
総務省からの回答
無線局運用規則第30条の規定は1回の通報(送信)が長時間継続しているときに適用されます。アマチュア局の場合、お互いに送受信を交互に行うため1回の送信が10分を超えることはまれなので、この規定による送信はほとんどありません。ただ通信の相手局が受信状態になったときに自局が送信する際、無線局運用規則第23条に規定する応答事項を送信する必要があることから、結局、識別信号の送信は必要です。
結論
第30条が適用されるのは、連続で10分以上話し続けるマシンガントークオペレーターのみです。通常の交信では適用されませんが、結局は(Q1の回答の通り)慣例として送受信の切り替え時にコールサインを送るのが望ましいです。
移動運用の「ポータブル〇〇」について
「こちらは JL1HMT ポータブル ワン」のように、移動運用の際にコールサインの後ろにポータブル・地域番号をつけることがあります。「ポータブル」や「/エリア番号」は、コールサイン自体を変えるものではなく、あくまで追加サフィックスとして送出している位置づけであり、これもまた慣例です。移動運用であれば交信開始時だけは「ポータブル◯◯」をつけて、以降はつけないようにするのが良さそうです。
(電波法第58条では免許状に記載されたコールサインを必ず送出することが義務付けられていますが、 この追加差フィックスについては法律的には定められていないため、つける義務ははありません。)
QSLカードについて
QSLカードとは、交信したことをお互いに証明するための「物理的なカード」もしくは「電子的なログ」のことです。
433MHz帯に限って言えば、カードの交換はそこまで積極的に行われていないようです。 実際に、相手から「ノーQSLでお願いします(カード交換なしで)」と言われたり、そもそも交信の中で話題にすら出ないこともあります。
正直なところ、現代においてわざわざ紙のカードを作る必要はないでしょう。言うなれば「廃れた年賀状」のようなものです。
交信を傍受していると、デジタルQSLサービスの一つである「だれでもQSL」(https://fqsl.jp))を利用している人が一定数存在しているようでした。紙にこだわらず、こうしたWebサービスを利用するのも一つの手です。
コンテストと言っているCQに対して応答して良いか?
POTA SOTA などの公園・山頂からの移動運用者が出すCQに対して、通常の交信通り気軽に応答しても問題ないことが多いです。
その他のコンテストは応答に条件があったりするので応答しないほうが良いかもしれません。
コンテスト参加局は多くの交信を求めているため、簡潔にRSレポートと交信場所を交換するだけで交信が終わります。その点は初心者向きではあるのですが・・・
まとめ
今回調べてみて痛感したのは、アマチュア無線の運用や法令の解釈について、誰もが容易にWeb上で確認できる状態になっていないということです。
明文化されていない「慣例」が多すぎるにもかかわらず、それらが公式な資料としてまとまっていないのが大きな問題です。本来、こうした情報の整理や周知を担うべき関連する団体においても、Web上での情報公開やガイドラインの整備には、まだ改善の余地があるように感じました。
アマチュア無線の人口は減少していますが、単に趣味の多様化だけが原因ではなく、こうした閉鎖的な慣習がある「新しい人が入りにくい環境」が根底にあるのではないでしょうか。